福島支援
福島第一原発の事故はいまだに収束していません。福島民医連では、厳しい医師・看護師体制の中、見えない放射線の不安を抱えながら、地域医療を守る活動が続けられています。東京民医連では、6月の1カ月間、立川相互病院の飯山きえ医師が医療生協わたり病院に赴いたほか、小児科の単位支援や内視鏡支援、当直支援など、福島民医連への医師支援を続けています。また、福島で仕事を続けている職員を励まし、夏期休暇でリフレッシュできる体制を確保するために全国からの看護支援が7月17日~9月25日の10週間にわたり行われています。東京民医連から約2週間ずつ病棟支援に行った2人の感想を紹介します。
医療生協わたり病院へ 看護支援で連帯深まる
大田病院看護師 小林 愛
7月17日から31日、福島・医療生協わたり病院に行きました。わたり病院は福島駅からバスで15分ほどの場所にあり、最近やっと除染が始まったという地区です。
私が支援に入った3階南病棟は外科・内科・小児科の混合病棟でした。保清がとても充実していて患者さんがきれいだなというのが第一印象でした。経験のある看護師として行き、電子カルテの種類が違うことや、1日の流れが違うこと、物品の種類や場所が違うことなど、意外にストレスに感じるんだなと思いましたが、人間関係などとても馴染みやすい環境でした。
被災地の視察では、富岡町という帰宅困難地域とされている町を見てきました。ほとんど津波に襲われたときのままで、人影はまったくなく、閑散としていました。震災の被害も相当なものでしたが、それ以上に原発事故によって幸せな生活を奪われた人たちが震災から2年5カ月経った今も苦しんでいることを改めて痛感させられました。
震災・原発事故を過ぎたことにせず、これからどうしていけばよいのかみんなで考えなければいけないことだと感じました。関心を持ち、今回見てきた悲惨な現状が続かないよう、これ以上被害が拡大しないよう、できることを探していきたいと思いました。
東葛病院看護師 斉藤 幸子
この度、医療生協わたり病院に7月31日から8月14日までの2週間、看護支援に行ってきました。緩和ケア病棟に配属され、現場の看護師と一緒にケア中心にお手伝いさせていただきました。
緩和ケア病棟は今年の5月に発足したたばかりで、模索しながら日々の医療を実践しています。周辺に緩和ケア病棟はなく、地域から多くの入院患者を受け入れています。
2011年の原発事故後、若い看護師や子どものいる看護師が15・16人県外に移転され、辞めていかれたとのこと。それでも若い看護師が多く、日常の看護活動に頑張っていました。優しい看護師ばかりでとても良くしてもらいました。患者一人ひとりに丁寧で個別性のある看護をしており、誕生会など患者も家族も満足しているようでした。
8月10・11日の2日間に「こども保養プロジェクト支援」の医療班として、会津の温泉施設に同行しました。福島市内は放射線量が高く、屋外で遊ぶことができないため、放射線の少ない場所で思い切り遊ばせるという企画です。子どもたちは、大喜びで何気ないイベントにも大はしゃぎ。私といえば、いきなり舞台に上げられて一生に一度の大恥をかいてしまいましたが、今は楽しい思い出です。
短い期間でしたが、多県連からの支援看護師と知り合いになり、久しぶりに看護ケアをすることにより自分自身も癒された思いがします。突然の支援者であるにもかかわらず、温かく受け入れてくれたわたり病院の皆さんに感謝いたします。
被災者の不安取り除く 代々木病院で集団健診
8月4日、保養のために福島から1泊2日で東京を訪れた親子連れなど14人の方の集団健診を行いました。
健診は、神奈川民医連の竹内啓哉医師のご指導のもと、代々木病院を会場に東京民医連被ばく対策委員会主催で医師5人を含む15人のスタッフで行いました。
子ども7人の甲状腺エコー検査の際は、お母さんにもエコーの画面を見ていただきながら説明をしました。福島の県民健康管理調査では、子どもの検査の様子を保護者の方が見ることはできず、また検査の結果についても、「A2」などの「判定結果」が送られてくるのみとのことで、保護者の方々の不安や不信感が強くなる原因のひとつになっているようです。
命を守る取り組みとともに、被災した方々の不安を少しでも取り除くために何が必要か、真剣に考える必要があると感じます。
子どもたちの採血をしたり、赤ちゃんの心電図をとったりしながら、子どもたちに大きな負担を強いることになったことへの憤りを感じずにはいられませんでした。
健診が終わり、親子が乗ったバスを見送った後、甲状腺エコー所見について、集団的に検討を行いました。受診者には血液検査の結果を待って、最終的な総合判定を行い、結果をお伝えする予定です。
引き続き、東京民医連が行っている2つの健診(福島からの避難者の健診、ホットスポット健診)を、命と健康を守る取り組みとして、ぜひおう盛にすすめていきたいと考えています。
(中野共立病院・谷川智行)