東京民医連

東京民医連のご紹介

みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

労働ストレスとうつ因子との関連性

社会医学会・学会奨励賞を記念して天笠崇医師が講演

患職域のメンタルヘルスに取り組んで

 04年7月、03年の1年間に自殺した人が3万4427人となり、過去最悪の記録をさらに更新したと報道されました。自殺者数が3万人を超えるのはこれで6年連続。1日に100人近くが自殺する日本は世界有数の自殺大国です。
 1999年の春、過労自殺の問題を追求していた天笠崇医師(メンタルクリニックみさと所長。当時はみさと協立病院勤務)のもとに、ある事業所から「体の健康診断と同じように、心の健康診断ができないか」という依頼が。それは事務系職員を中心にした2百人余の民主的経営の事業所で、顧客から多数の自殺者が出たこと、また精神疾患での休職が目立つようになったことから、職場のメンタルヘルスを改善しなければいけないと考えてのことでした。
 「よっぽどの思いがあると直感的に感じ、何ができるかわからないが応えたいと思いました」と天笠医師は語ります。
 当時はまだ職場のメンタルヘルスに取り組む事業所は少なく、天笠医師は手探りで学びつつ、支援プログラムを提供しました。その柱の一つが「心の健康診断・質問表」を使った調査でした。99年12月に第1回調査を実施、それ以降1年ごとに実施しました。
 天笠医師はこのデータをもとに「労働ストレスと主観的QOL、及びうつ因子との関連性」について研究をすすめ昨年7月、その研究結果を社会医学会で報告。今年7月、それが学会奨励賞を受賞しました。
 「職域のメンタルヘルスに対して微力ながら一石を投じることができたのではないか」と天笠医師は話しています。

労働ストレスの悪玉度が強まっている

 04年9月29日、みさと協立病院では受賞を記念し講演を開催。天笠医師によれば、労働時間と健康障害、特にうつ状態ないしうつ病との関連性について解明しようとした研究はほとんどないとのこと。天笠医師は表を示しながら、「労働時間が20時間増加するごとにオッズ比(うつ因子に対する労働時間のオッズ比)は3倍になるという結果が出ました。これによって、労働時間が長くなるごとに、うつ因子が高くなることが示されました」と説明します。
 政府統計では80年代より90年代のほうが労働時間は減っています。それなのになぜうつ病が増え、自殺者が増えているのか。「研究データから予測されることは、労働ストレスの悪玉度が強まっていること。労働時間は減ったけれど、うつ病は増えているということは、労働ストレスが悪化しているということです」
 今、東京民医連では職域のメンタルヘルスの取り組みを広げようと、さまざまな活動を始めています。その一つとして、立川相互病院の看護集団がモデル事業を引き受けてくれ、これから研究が開始されます。その研究にあたる一人である天笠医師は、「自分の経験を生かして、研究面でもより価値のあるものを、実践面でもより質の高いものを提供していきたい」と語っています。