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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

難病患者さん涙の訴え 状態調査に立ち上がる

 「先の生活、病気のこと、考え出せば不安ばかり。そのうえ難病の医療費助成が打ち切られるなんて…」。中野共立診療所の診察室で、一人の女性患者さんが流した涙がきっかけでした。所長の呼びかけで「切り捨てられる難病患者さんの状態調査」実行委員会がスタート。4カ月かけた準備の末、10月4日・5日、13人の患者さんの訪問調査を実施。語られた思いは、参加者の心に深く響くものでした。

8割が打ち切り

 「ちょうど四月のことでした。ネフローゼや肝炎など、僕が意見書を書いた患者さんの八割が難病打ち切りになった。患者さんがこんな思いをしているのに、東京都の難病指定をはずした石原知事が大差で再選。負けっぱなしにはしたくないと思いました」と所長。
 そこで以前「杉並・有志の会」がとりくんだ「高齢者状態調査」を、中野で難病患者さん対象にやってみようと。経験者である杉並の保健師さんの協力も得て、7月に実行委員会を立ち上げました。 さまざまな職種の職員、そして医学生・看護学生もボランティアで参加しました。

深刻さずっしり

 「状態調査」では、直接のテーマ以外の生い立ちや経済状態、家族との関係、趣味・特技に至るまで、相手の話に共感し、対話を広げる中で深い思いを本音で語ってもらいます。調査の意義やすすめ方の学習、対象患者さんの検討など事前の準備を経て、迎えた調査当日。
 西荻窪診療所の看護師と中野共立病院の事務の職員が訪ねた先は、73歳の肝炎の男性患者。本人が入院中のため、妻との対話でした。
 一言一句聞き漏らすまいと緊張していた2人は、話始めたとたんに涙をこぼす妻の姿に、いきなり衝撃を受けます。それは、夫の体を思い、子どもの将来を案じる母親の心底からの叫びでした。
 夫が肝炎を発症したのは30代のとき。以来内服治療を続けていますが、最近は腎臓の具合も悪く、透析を開始することになっています。難病助成は肝炎が重症であることから3年間の経過措置となっていますが、その先が今から不安です。
 この夫婦には2人の息子がいましたが、長男は出生時のトラブルで重い障害をかかえ、今も四国の施設に入所しています。そのうえ次男は今年春、37歳で亡くなりました。「私たちがいなくなった後、長男はどうなるのか」と、心が痛むばかり。
 訪問した看護師は「ケアマネジャーとして、利用者さんの話を聞く機会も多いのですがこれほど胸にずっしりきたことはなかった」と言います。そして「難病の深刻さが実感できました。この内容を広く伝えたいし、医療者側もどうしたら援助できるかをしっかり考え、情報提供しなければ」と痛感しています。