東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

在宅の場で寄り添う訪問看護を

 90代の男性A氏は、カラオケやお琴にハーモニカの練習から町会のイベントと多忙にされていた元気な方。今年の2月、偶然胸部レントゲン上陰影がみられ、進行胃癌末期の診断を受けるが、「もう歳だから治療なんかいいよ」という希望により、積極的な治療は行わない方針となる。
 自宅にて普段通り過ごされていたが、7月頃より背部痛が出現、オピオイドの開始目的で入院された。座薬や内服などいろいろ試したが、入院と同時に狭窄に伴う嘔吐の症状が出現。
 ご本人はオピオイドの副作用と思い拒薬。「病院にいると病人になる、空気が悪い、家に帰りたい」と全てのオピオイドを中止し退院、初めての訪問看護導入となった。
 初回訪問時、末期とは思い難い多弁さ!「安楽死の制度の整備をしていかないとならん」娘「制度が出来る頃にはお父さんは死んでるでしょ」のやり取り。「看護師さんの訪問に感謝!」と日記に力強い文字。
 それから、口に出来ていた氷片も日に日に食べられなくなり体力の低下がみられていく中、自力で浣腸をしたりシャワーを浴びたりと、とにかく自分で出来ることはされていた。「これが最期だから」と娘さんにお琴を披露。点滴をしながら訪問看護師にハーモニカを吹いてくれることもあった。
 いよいよ自力での体動が困難になったころ、看護師訪問時にキッチンで切腹しようとされているA氏を発見。「胃癌は仕方ない。動けなくなることがつらい」と話された。娘さんがコンビニへ行った数分の間で呼吸停止。表情は本当に穏やか、寝顔そのもの。娘さんより「ありがとうございました。母の時もお願いしたかったです」と感謝の言葉を頂いた。
 A氏が過ごしたいように過ごすことを支えるべく、関わった2週間。在宅の場で、その方の希望や決断、覚悟に寄り添う訪問看護をこれからも続けていきたいと改めて思えた。
(虹の訪問看護ステーション・2018年1月号掲載)