東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

人の人生を物語る最期

 さかえ訪問看護ステーションは一人暮らしで生活保護を受けている利用者が約4分の1。
 認認夫婦や認認兄弟、終末期ケアと訪問看護はいろいろなケースに対応しています。
 肺がん、頸椎・脳転移の80代、男性。夫婦二人暮らしで、バスの運転手から都職員になり三人の子どもを育て、孫と一緒に住むことを夢見ていたSさん。初回訪問時、耳の裏側から後頭部、左肩の痛みに加え便秘に苦しんでおり、摘便するとそんなことまでやってくれるんだ、楽になったと。また家族から「お風呂が大好きな父」、ご本人も「お風呂にも入りたい」と訴えられた。
 3日後、ベットサイドに5分も座っていられず両手の内出血と浮腫が出現。痛みや苦痛がない時間に看護師が訪問、入浴介助した。2週間後に訪問入浴に変更。だんだん動けなくなってくる夫に対し何をしていいのかわからない奥様は、「ここではみられない。入院してほしい」と訴えた。すぐ往診医へ連絡を取り入院できることを確認し伝えた。
 子どもたちは、週末家族会議を開いた。自分たちのできるところまで自宅で父をみよう、順番で泊まって面倒をみようという意思を聞き、「きっと最期まで家で過ごせる」とスタッフたちと確信した。週3~4回の訪問時に自然な形で子どもたちと孫で清拭、更衣、ひげそり、水分補給、体位交換などを一緒にやった。カラオケが好きで、お孫さんが耳元に音楽を流すとサブちゃんの歌を口ずさみにっこりされる。厳格な父、生活を時間で動いていた母。未だに11時になると昼食の準備に取りかかり12時には食べられる形は崩さなかった。
 3週間過ぎた日曜日、家族が全員そろった夕食後に、安らかな表情で息を引き取られた。子どもたち以上に孫が泣き崩れていた。その人の最期はその人の人生を物語る。いかに残される家族が後悔しないように関わり、満足した時間が過ごせるよう援助する―これこそが在宅の醍醐味。(さかえ訪問看護ステーション・2014年9月号掲載)