東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

高次脳機能障害に関わって

 A氏は61歳の男性。陳旧性脳梗塞の既往があり、今回も脳梗塞で他病院に入院。急性期治療後、リハビリ目的で当院へ転院となった。
 入院時は身体機能的には自立に近い状態だったが、高次脳機能障害による自発性の低下や遂行障害の影響から、日常生活すべての行動に声かけ・介助が必要だった。
 入院当初の面談時、後遺症が残る可能性が告げられると、A氏に涙ぐむ姿が見られた。私は、A氏が身体機能の受容ができていないと感じた。ADLが少しでも上がればA氏の自信につながると考え、生活を自立へ近づけるため自発性を促す声かけ・介入をおこなった。A氏の自発行動を待ち、次に何をすべきか一緒に考え、必要時「次はどうしますか」などの声かけや介助を行った。
 以前はトイレ内で行動に移れず動けずにいたA氏だったが、介入によって徐々にズボンの上げ下げ、水洗ボタン操作、手洗いまでの行為が可能になった。できたことはその都度A氏に伝え、自信が持てるように援助した。
 コミュニケーションについては、簡単な質問の理解は可能だが、長文会話の理解は困難であった。また自発語もほとんどなく表情も常に怒っているような顔つきのため、A氏のうなずきで意思を理解している状況だった。
 妻によるとA氏は元々無口な性格であった。看護師はA氏とのコミュニケーション強化のために、日中はデイルームで過ごしてもらい頻繁に声かけをおこなった。またレクリエーションや体操にも積極的に参加してもらった。はじめは拒否もあったが、徐々に恥ずかしそうな笑顔で体操を一緒にするようになった。
 これらを繰り返すことで、表情が変化し笑顔がみられた。自発語も増加し、ジェスチャーでの意思表示やスタッフに親しみをこめてふざけるような行動も見られた。目的を明確にして継続的に関わることによって、ADLやコミュニケーション力が向上した事例であった。
(大田病院・2014年1月号掲載)